自然

阿漕ヶ浦は、古くから村松大神宮の神池として大切にされてきた、由緒ある湖です。静かな水面には神聖な空気が漂い、今もなお信仰の心が息づいています。その湖畔に広がる阿漕ヶ浦公園は、自然に囲まれた穏やかな場所で、地域の人々の憩いの場となっています。遊歩道をのんびり散歩する人や、元気に遊ぶ子どもたちの姿が見られ、歴史ある土地でありながら、どこか親しみのある空気が流れています。四季折々の風景と、人々の穏やかな日常が交差するこの場所は、静けさと温かさが調和する心地よい空間です。

村松海岸は、古くからその美しい景観が人々に親しまれてきた海岸です。江戸時代には、水戸藩第九代藩主・徳川斉昭によって「水戸八景」の一つ「村松晴嵐（むらまつせいらん）」として選ばれ、その名は今も石碑に刻まれています。海からの風が松林を揺らす情景は、古来より詩歌や絵画の題材ともなり、多くの文人墨客に愛されてきました。また、村松海岸一帯は、潮風にさらされながらも自然が織りなす独特の景観を持ち、歴史的にも文化的にも価値の高い地域とされています。かつては旅人や参詣客の往来も多く、地域の交流の場としても重要な役割を果たしていました。このように、村松海岸はただの自然景勝地ではなく、時代を超えて多くの人々の記憶に残る、歴史深い場所として知られています。

海岸から続く「八間道路」は、大神宮や村松山虚空蔵堂へと通じる約1キロメートルの道で、かつては十三参りの時期に多くの参詣客で賑わいました。その一方で強風と飛砂による被害が深刻で、集落が砂に埋もれる「千々乱風伝説」が語り継がれています。これを受けて、大正時代に国の試験地として砂防林の造成が始まり、約35年間で約184ヘクタールのクロマツ林が完成しました。この造林法は「茨城式」と呼ばれ、全国の砂防林造成のモデルとなりました 。近年では、松くい虫被害によるクロマツの枯死が問題となっていますが、地域住民や学校が協力して「クロマツ林リジェネプロジェクト」を進め、植樹や環境学習を通じて景観と機能の回復に取り組んでいます 。